フラメンコの靴音について なぜ音が出るのか 靴裏に秘められた想い
フラメンコのダンサー(バイラオール/バイラオーラ)が躍るとき、あなたがイメージするのは何ですか?お衣装?髪型?音楽?靴音?
そう、フラメンコのダンサーが躍る時はまるでタップダンスのような靴音がします。この音の正体、わかりますか?今日はフラメンコの足音についてお話ししたいと思います。
フラメンコの足音が出るのはなぜ?
音の正体
ずばり、あの音の正体をお教えしましょう。
「釘」です。釘、特殊な釘?いいえ、普通の釘なのです。
職人さんによって釘が靴のつま先とヒールに約200~300本ほど打ち付けられています。
たこ愛用のサパトス様モデル。色が好きで同じ皮で作ってもらっています
タップダンスやアイリッシュダンスの靴裏を見たことはありますか?とても綺麗な一枚の板が張り付けてあります。スタイリッシュで美しいです。
同じく床を靴で踏んで音を出すフラメンコはなぜか、釘なのです。この釘にははやりジプシーの歴史が深くかかわってきます。お話しする前に動画を見てください。
動画を見てみよう。
フラメンコの名門ジプシー、ファルーコ一族です。フラメンコ界の帝王ファルキートの少年の頃のアレグリアス。フラメンコを始めるまでフラメンコを観た事なのかった私の「フラメンコとは何かわかるDVDを下さい」という問い合わせに、フラメンコ専門店のアクースティカというネットショップのオーナーさんがおすすめしてくださったDVD3枚のうちの一枚「栄光の婚礼」
ジプシーの歴史からみる釘の正体
ジプシーの起源から見る釘
動画を見てどう感じましたか?うしろに映る住居洞窟。砂埃のする大地。髪に飾っている葉。フラメンコがフラメンコという名前を与えられ今のように整えられる前。フラメンコの原型になる音楽は流浪の民たちの内輪の音楽でした。
フラメンコ、水玉の謎という記事でも書きましたが、諸説あるジプシーの起源だといわれるものの一つに遥か昔、インドで戦いがあり負けたほうの部族が土地を追い出されあての無い流浪の旅に出ることになります。安住の地を求めて移動をします。
行く先が分かっていても旅は大変だったその時代、行く先の決まらない旅を強いられている彼らの絶望は計り知れません。
しかし、歩みを止めることはできません。歩き続けなかねば。そういう時、人間は歌を歌うのだそうです。歌を歌う人がいればそれに合わせて身体を動かす人が出てきます。音に合わせて身体を動かせばダンスになります。
歌とダンスがあれば、楽器が欲しくなります。でもまだキターはありません。
何か、音が出るものが欲しい。
彼らは歩きながら落ちている釘を拾い集め靴裏に打ち付け音が出るようにしました。これがフラメンコの靴裏にチップでなく釘が打たれている理由だという説があります。
諸説ある中の一つですのでこれが絶対というわけではありませんが、このような歴史があることを知って、フラメンコの靴音を聴いてみると感慨深いものがあります。
フラメンコで大地を踏みしめ音を出す意味
靴に釘を打ち付ける前から足音を出していた
上記のように楽器の代わりに音を出すために釘を靴に打ち付けたのですが、靴を履く前から足で大地をたたき音を出しながら踊っていたそうです。何故でしょう
音を出す意味
ジプシーの元祖はインドの民だといわれています。インド舞踊も素足で土を踏みたたきながら踊ります。そこには土の中に居る精霊を音によって呼び覚ます。という意味があるのだそうです。
流浪の民になったジプシーの人たちも、土の中に居る精霊を呼び覚ますために足音を出していたとのこと。
ドゥエンデ
フラメンコではこの精霊のことをドゥエンデと言ったりします。精霊、と書きましたが、フラメンコまで昇華するとこのドゥエンデは魔という概念で捉えられます。
人は「魔」に魅力を感じます。
ぞくぞくするようなフラメンコに出会ったとき「ドゥエンデが現れた」と言い現し、そのようなフラメンコを体現することの出来る希少な演者を「あの人にはドゥエンデがある」と褒めたたえます。ドゥエンデが現れるフラメンコにはなかなか出会うことは難しいのです。
フラメンコの靴音について 何故音が出るのか 靴裏に秘められた想い まとめ
フラメンコの靴裏には釘が打ち付けられている事。その釘にはジプシーの歴史が関係している事。
足音によって精霊、魔を呼び覚ます意味がある事。
そして人々が魅了されるフラメンコの魔・ドゥエンデについて、書かせていただきました。
諸説あるうちの一つなのですが私はこの説が好きなので、ボランティアや小学校の生涯学習などでこちらを主にお話しさせていただいています。
このような逸話を知っておくと、これからフラメンコに接する時、興味深く楽しんでいただけるのではないかと思い、ご紹介しました。
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